- 監修:名古屋大学大学院医学系研究科 病態内科学講座
腎臓内科学 教授 丸山 彰一 先生 - 名古屋大学医学部附属病院 腎臓内科
講師 加藤 規利 先生
aHUSの治療
aHUSの治療薬として、ラブリズマブとエクリズマブが本邦において承認されています1,2)
ラブリズマブ:「非典型溶血性尿毒症症候群」を適応症として2020年9月に承認1)。
エクリズマブ:「非典型溶血性尿毒症症候群における血栓性微小血管障害の抑制」を適応症として2013年9月に承認2)。
1)
ユルトミリス®インタビューフォーム2022年8月改訂(第8版)
2)
ソリリス®インタビューフォーム2022年10月改訂(第17版)
ラブリズマブ投与※1)
※2020年9月に抗補体モノクローナル抗体製剤ラブリズマブにaHUSの適応追加、2021年8月に100mg/mL濃度製剤の剤形追加が承認されました1)。
ラブリズマブはエクリズマブの消失半減期を長くした長時間作用型の補体C5 阻害薬であり、維持投与の投与間隔が2 週間から4週間または8 週間に延長されました2)。
補体制御異常による非典型溶血性尿毒症症候群*の患者に使用すること1)。
*「 非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)診療ガイド2015」(日本腎臓学会・日本小児科学会)を参考にすること。
二次性血栓性微小血管症の患者に対する本剤の有効性及び安全性は確立していません(使用経験がない)1)。
1)
ユルトミリス®電子添文 2022年8月改訂(第6版、効能変更)
2)
Rondeau E, et al. Kidney Int 2020; 97(6): 1287-1296.[利益相反:本論文の著者にAlexion Pharmaceuticals, Inc.の社員が含まれる。著者にAlexion Pharmaceuticals, Inc.より顧問料、講演料等を受領している者が含まれる。執筆はAlexion Pharmaceuticals, Inc.の資金提供による支援を受けた。]
エクリズマブ投与1)
エクリズマブの使用量は、年齢、体重により使用方法が異なるので、電子添文を確認します。腎機能低下例でも減量の必要はありません。
エクリズマブによる治療後、血小板低下例のaHUSでは1~2週間以内に血小板数の回復が認められる例が多いとされています2,3)。本邦における10例の小児aHUS患者に対してエクリズマブを使用した研究では、aHUS遺伝子変異特定例、および既知遺伝子変異が見つからないaHUS例も、エクリズマブ使用後、1週間程度で血小板数の改善が認められていることから4)、エクリズマブが著効する例は、既知の原因遺伝子変異が認められなくても補体系異常によるaHUSが示唆されます。
抗H因子抗体陽性例に関しては、血漿治療単独よりも、血漿治療と免疫抑制薬*・ステロイドとの併用により、抗体価を減少させ予後が改善することが報告されています5)。エクリズマブは、抗H因子抗体価を下げる効果はないと思われますが、臓器障害を伴ったaHUSの場合には使用も考慮されます6)。抗H因子抗体陽性例に対して、血漿治療、エクリズマブ、免疫抑制薬、ステロイドの中で、どの様な治療法が良いかに関しては、今後の研究課題です。
なお、エクリズマブによる治療が対象となるのは、本邦の2013年の診断基準での補体制御異常によるaHUS、2015年診療ガイドでのaHUS(補体関連HUS)であり1)、二次性血栓性微小血管症の患者に対するエクリズマブの有効性及び安全性は確立していません(使用経験がない)7)。
*aHUSに対して本邦未承認
1)
非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)診療ガイド2015. 日腎会誌, 2016;58(2):62-75.[利益相反:本論文の著者にアレクシオンファーマ合同会社より講演料、奨学寄付金を受領している者が含まれる。]
2)
Legendre CM,et al. N Engl J Med, 2013; 368(23):2169-2181.[利益相反:本論文の著者にAlexion Pharmaceuticals, Inc.の社員が含まれる。本試験はAlexion Pharmaceuticals, Incの支援によって実施された。]
3)
Licht C, et al. Kidney Int, 2015;87(5):1061-1073.[利益相反:本試験はAlexion Pharmaceuticals, Inc. の支援によって実施された。]
4)
Ito N, et al. Clin Exp Nephrol, 2016;20(2):265-272.[利益相反:著者にAlexion Pharmaceuticals, Inc.よりコンサルティング料、講演料等を受領している者が含まれる。]
5)
Fremeaux-Bacchi V,et al. Clin J Am Soc Nephrol, 2013;8(4):554-562.[利益相反:本論文の著者にAlexion Pharmaceuticals, Inc.より講演料を受領している者、Alexion Pharmaceuticals, Inc.の諮問委員会のメンバーが含まれる。]
6)
Loirat C, et al. Pediatr Nephrol, 2016;31(1):15-39. [利益相反:本論文の著者にAlexion Pharmaceuticals, Inc.の諮問委員会のメンバー、Alexion Pharmaceuticals, Inc.より研究助成金を受領している者が含まれる。]
7)
ソリリス®電子添文 2022年9月改訂(第4版)
腎移植1)
腎移植
aHUSで腎不全となった患者に対して、腎移植が試みられてきましたが、aHUSの原因となる遺伝子変異によって腎移植後の再発率が異なることが知られています。本邦で多いC3や欧米で多いCFHの遺伝子異常では移植後の再発率が高いことが知られています。
一方MCP遺伝子異常や低力価抗H因子抗体では移植予後は良好との報告があります。
再発率が高い遺伝子異常でも、周術期の血漿交換やエクリズマブを投与することで移植後再発を防げたとの報告があります2)。
1)
非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)診療ガイド2015. 日腎会誌, 2016;58(2):62-75.[利益相反:本論文の著者にアレクシオンファーマ合同会社より講演料、奨学寄付金を受領している者が含まれる。]
2)
Loirat C, et al. Pediatr Nephrol, 2016;31(1):15-39.[利益相反:本論文の著者にAlexion Pharmaceuticals, Inc.の諮問委員会のメンバー、Alexion Pharmaceuticals, Inc.より研究助成金を受領している者が含まれる。]