- 監修:名古屋大学大学院医学系研究科 病態内科学講座
腎臓内科学 教授 丸山 彰一 先生 - 名古屋大学医学部附属病院 腎臓内科
講師 加藤 規利 先生
aHUSの予後は?
aHUSの遺伝子別頻度と予後1)
海外からの報告では、表の様に原因遺伝子別に血漿交換への反応性、腎移植後の予後が報告されていますが、日本では蓄積された症例報告がなく、日本人の予後は不明です。またエクリズマブ治療により予後の改善が報告されていますが2)、遺伝子別の治療成績は不明です。
aHUSの遺伝子別の頻度と予後3,4) [国内及び海外データ]
異常因子 | 変異の影響 | 頻度 欧米(本邦) |
血漿交換の 短期的効果 |
血漿交換の 長期的効果 |
腎移植後の 腎予後 |
---|---|---|---|---|---|
CFH | 血管内皮に結合できないことによる補体制御機能低下 | 20~30%(7%) | 寛解率60% | 死亡または腎不全70~80% | 再発率80~90% |
Anti-CFH Ab | 抗H因子抗体の出現 | 6%(13%) | 寛解率70% | 腎不全30~40% | 再発率20% |
CD46、MCP | 血管内皮表面の発現低下、補体制御機能低下 | 10~15%(5%) | 一般的に軽症 | 死亡または腎不全20%以下 | 再発率15~20% |
CFI | Co-factor機能低下 | 4~10%(0%) | 寛解率30~40% | 死亡または腎不全60~70% | 再発率70~80% |
CFB | C3 convertase安定化 | 1~2%(2%) | 寛解率30% | 死亡または腎不全70% | 再発の報告あり |
C3 | C3b不活化低下 | 5~10%(42%) | 寛解率40~50% | 死亡または腎不全60% | 再発率40~50% |
THBD | C3b不活化低下 | 5%(7%) | 寛解率60% | 死亡または腎不全60% | 再発の報告あり |
DGKE | DAGシグナルによる血栓形成 | 不明、2013年に13例の報告(1例) | 不明 | 20歳までの腎不全が多い | 再発のリスクは低い |
PLG | 血栓形成 | 5%?(報告なし) | 不明 | 不明 | 不明 |
CFH: complement factor H; MCP: membrane cofactor protein; CFI: complement factor I; CFB: complement factor B;
THBD: thrombomodulin; DGKE: diacylglycerol kinase ε; PLG: plasminogen
小児および成人aHUS患者の遺伝的特徴と転帰[海外データ]
本試験では、TMA症状の初発時にESRD(End stage renal disease:末期腎不全)または死亡に至らず、ESRDがみられなかった成人aHUS患者さんの47% で追跡期間中(中央値57ヵ月)にESRDへの進行または死亡がみられました。
〈成人aHUS患者〉
小児aHUS患者さんでは、TMA症状の初発後1ヵ月以内に17%(15/89 例)でESRDへの進行または死亡がみられ、5年以内に36%(32/89 例)でESRDへの進行または死亡がみられました‡。[海外データ]
70% 以上の成人aHUS患者さんはESRDや死亡のリスクを有するという報告があります§。[海外データ]
* 診断後1ヵ月以内。
† 最終フォローアップ時に新たにESRD または死亡が確認された患者:追跡期間の中央値は57ヵ月(範囲:1 ~ 353ヵ月)
§ 最終フォローアップ時、成人の患者さんの71%(89/125 例)がESRD または死亡に至りました。
Fremeaux-Bacchi V, et al. Clin J Am Soc Nephrol, 2013;8(4):554-562.[利益相反:本論文の著者にAlexion Pharmaceuticals, Inc.より講演料を受領している者、Alexion Pharmaceuticals, Inc.の諮問委員会のメンバーが含まれる。]
試験概要[海外データ]
- 【目 的】
- 補体制御因子の遺伝子変異がaHUS発症年齢、臨床的表現型および転帰に及ぼす影響を小児と成人で比較検討する。
- 【対 象】
- 機械的溶血性貧血[ヘモグロビン<10g/dL、乳酸脱水素酵素>正常値の上限(ULN)、血液塗抹標本で破砕赤血球がみられる]、血小板減少(血小板数<150×109/L)、および腎不全(血清クレアチニン値>年齢のULNかつ/または蛋白尿>0.5 g/ 日、もしくはネフローゼ症候群)が併存し、かつ/または腎生検での血栓性微小血管症病変(毛細血管および/または細動脈血栓症、基底膜の二層化)が認められるフランスの小児(16歳未満)および成人非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)患者214 例。
- 【患者背景】
- aHUS の発症時期は、小児期が89例(42%)、成人期が125例(58%)であった。平均発症年齢は、小児では1.5歳(0~15歳未満)、成人では31歳(15~85歳)であった。女性と男性の比率は、小児で0.9:1、成人で3:1であった(P<0.001、χ2 検定)。aHUSの主な誘因は、小児では胃腸炎または下痢、成人では妊娠であった。神経症状が認められた患者の割合は、小児で16%、成人で8% であった。aHUSの初発時に透析を必要とした患者の割合は、小児で59%、成人で81%であった(P<0.001、χ2 検定)。
- 【方 法】
- 補体制御因子であるH因子、I因子、MCP、C3、B因子およびTHBD遺伝子の配列を解析し、変異を特定した。療録レビューにより発症年齢、性別、誘因、発症時の症状、疾患の転帰(再発の有無、再発時期)、末期腎不全への移行を確認した日、死亡日、死因等のデータを収集した。
- 【解析計画】
- χ2 検定を用いて各変数の分布の群間比較を行った。全aHUS患者(小児および成人)を対象として、H因子、MCPおよびCFHR1の一塩基多型およびハプロタイプとaHUSとの関連解析を実施し、対照と比較した。Pearsonのχ2 検定によりP値およびオッズ比を算出した。